2017年4月26日水曜日

頭部外傷 ~スポーツにおける脳震盪を中心に~  No.4

今回は、主に頭部外傷による頭蓋内出血について説明して行きます。

<頭蓋内出血とは>
 頭蓋骨の中における出血を表すが、出血した場所によって名称が異なる。

<原因>
 多くは頭部へ強い衝撃を受ける事によって頭蓋内の血管が損傷して、頭蓋骨と脳の間や
 脳の内部に出血して脳が影響を受ける。

<種類>
 ・硬膜外出血・・・・発生場所が側頭部や頭頂部において約50%と多く、中硬膜動脈
           静脈洞における出血が多い。
           予後に関しては、脳損傷を伴うかどうか、また脳損傷の合併した
           程度によって変わって来る。
           脳損傷を合併しない場合で、早期の診断と早期の治療が的確に行
           われれば、予後は良好な事が多い。
 ・硬膜下出血・・・・脳の表面の動脈や脳の表面とくも膜を貫いて硬膜の静脈洞とを
           繋ぐ架橋静脈から出血して、硬膜とくも膜の間で血腫となり脳を
           圧迫する。
           受傷後、数分から数時間で症状が現れる急性、数時間から数日
           掛けて症状が現れる亜急性、数週間から数カ月、あるいは数年も
           経過してから現れる慢性に分類され、急性である程、重症となり
           予後不良を示唆する所見として重要。
           急性硬膜下血腫の場合は、強い外傷によって起こる事が多い為に
           脳の損傷も強く、受傷直後から約50%という高い確率で意識障害
           を呈する。
           脳の損傷は軽くても血管の損傷が大きい場合には、血腫の増大に
           伴って徐々に、または急激に脳が圧迫され、受傷当初には見られ
           なかった意識障害が徐々に、または急激に悪化して昏睡レベルに
           達する事があれば、予後は極めて不良となる。
           慢性硬膜下血腫の場合は、頭痛や嘔吐などの頭蓋内庄亢進症状
           加えて片麻痺や失語症といった局所神経症状が見られるが、
           高齢者では、元々の脳萎縮の為に頭蓋内圧亢進症状は少なく、
           痴呆や物忘れなどの精神症状、片麻痺や歩行障害、失禁などの
           局所神経症状となり、基本的には正しく診断されて早期に治療が
           行われれば、予後は良好となりやすい。
 ・くも膜下出血・・・一般的に、くも膜と軟膜の間にあるくも膜下腔を走行する動脈の
           脳動脈瘤呼ばれるコブからの出血が約80%を占め、その他に
           脳動静脈奇形からの出血や脳動脈解離による出血、頭部への外傷
           では架橋静脈の損傷よって起こる。
           約50%が死亡し、一命を取り留めても約20%は様々な後遺症が
           残る事になる。
特に脳動脈瘤の破裂による症状は、突然、バットなどで殴られた
           ような衝撃を伴う頭痛が起きて、嘔吐や片麻痺、項部硬直などの
           髄膜刺激症状が見られる。
 ・脳内出血・・・・・外傷による脳挫傷からの出血が原因で前頭葉や側頭葉に多い。
           症状は、部位や程度によっても異なるものの、頭蓋内圧の亢進に
           より激しい頭痛や嘔吐、意識障害などが見られる。
           多量の出血による圧迫で脳ヘルニアの状態にまで悪化すると、
           脳の深部にある呼吸などの生命維持の中枢である脳幹が侵され、
           死に至る事もある。
           脳挫傷によって昏睡状態となった重症の場合の死亡率は約50%で
           虚血性脳卒中を上回る。

<診断>
 出血や血腫は、CT検査で白色に映る(高吸収域)。
 MRI検査で灰色(T1WI、軽度低信号)、白色(T2WI、軽度高信号)に映る。
 緊急時の対応には、CT検査の方が向いている。

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