2015年12月11日金曜日

転倒による骨折に要注意! 『No.6』

前回は骨粗鬆症に伴って、高齢者に多い骨折の中での橈骨遠位端骨折について紹介しました。
<高齢者に多い骨折>
 ・脊椎圧迫骨折 (背骨)
 ・大腿骨頚部骨折 (股関節の骨)
 ・橈骨遠位端骨折 (手首の骨)
 ・上腕骨近位端骨折 (肩関節の骨)

今回は、上腕骨近位端骨折について説明します。

『上腕骨近位端骨折』
 上腕骨近位端骨折に関しては、年間約3万件と上記の4つの中では少ないのですが、全国で1日に80人以上が骨折している計算になります。

<原因>
 高齢者では転倒して手や肘を突いたり、肩を直接ぶつてけたりして、軽い外力でも骨折する事が多く、若い人ではスポーツや交通事故などの強い外力、幼小児では骨端線付近で発生する場合があります。
 約80%は転位(ずれ)の少ない非転位型と言われますが、残りの約20%は転位型と言われ骨のどこの部分がどのように折れたかによって分類されます。

<症状>
 受傷直後からの強い痛みがあり、時間の経過と共に腫れて来ます。
 上腕を拳上するなどの運動が不可能になり、転位の程度によって変形が見られます。
 骨折してから2~3日後に、肩から胸にかけて皮下出血が見られ、骨折と同時に脱臼を伴う事もあり、また折れた骨によって、脇の下を通過する腋窩(えきか)神経腋窩動脈腋窩静脈の損傷を合併する事があります。

<診断>
 診断には、X線(レントゲン)やCT、MRI検査を行い、受傷した部位と骨折の程度を判断します。
 骨の折れ方によって、治療法が異なる為、転位の状態や骨片の有無などの判断が必要になります。

<保存的治療方法>
 転位の少ない骨折は、保存的治療の適応で、三角巾とバストバンドと言われるバンドで上腕を体幹に密着させて固定します。
 受傷後の約3週で仮骨が形成され、約6週で骨癒合が安定して来ます。
<手術的治療方法>
 手術では、X線透視下でキルシュナー鋼線と言われる針金で固定する方法や、最近では、骨幹の中心部にある髄腔に金属製の長いロッド(棒)を打ち込んで固定する髄内固定法、ロッキングプレートと言われるプレートで固定する方法もあります。
 また脱臼を伴う場合や4ヶ月以上経過した陳旧例、重度の骨粗鬆症の場合では人工骨頭置換術が適応となります。

<予後>
 保存的治療方法でも手術的治療方法でも早期に治療すれば、予後は比較的良好です。

高齢者の方は、特に転倒には注意しましょう!

<古東整形外科のHPより>

2015年12月8日火曜日

転倒による骨折に要注意! 『No.5』

昨日7日は、二十四節気の『大雪』でした。
既に北海道では大雪となっている所もありますが、こちら岐阜県の美濃地方でも雪が降り出す頃で、食べ物で言えば『師走』という字でも使われて『師』が付く『鰤(ブリ)』が美味しくなる頃でもあります。
また冬型の気圧配置が強まり、内陸部や太平洋側では『風花』と言われる、晴天の青空の中をハラハラと舞うように降る雪が見られるようになります。

さて、前回は骨粗鬆症に伴って、高齢者に多い骨折の中での大腿骨頚部骨折について紹介しました。
<高齢者に多い骨折>
 ・脊椎圧迫骨折 (背骨)
 ・大腿骨頚部骨折 (股関節の骨)
 ・橈骨遠位端骨折 (手首の骨)
 ・上腕骨近位端骨折 (肩関節の骨)

今回は、橈骨(とうこつ)遠位端骨折について説明します。

『橈骨遠位端骨折』
 橈骨遠位端骨折に関しては、年間約10万件も発生し、前腕の2本あるうちの小指側にある尺骨(しゃっこつ)に対して、親指側の橈骨と言われる骨の遠位端で折れる骨折を言います。

<原因>
 転倒して手を突いた時に骨折する事が多く、その手の突き方によって骨折の種類が変わって来ます。
 一般的に手の平を突いて骨折した場合は、骨折線が手の平側から手の甲側に走り、見た目で手の甲側に乗り上げたような『コーレス(Colles)骨折』と自転車のハンドルを握ったままで手の甲を突いて骨折した場合は、骨折線が手の甲側から手の平側に走り、見た目で手の平側に沈み込んだような『スミス(Smith)骨折』とがあります。

<症状>
 手に力が入らず、手首に強い痛みが出て、短時間で腫れて来ます。
 折れた骨や腫れによって正中神経などが圧迫されて、手が痺れるなどの神経障害が見られる事もあります。
 コーレス骨折の場合は、フォークを伏せて置いたように見える事からフォーク状変形と言われています。

<診断>
 診断には、X線(レントゲン)やCT、MRI検査を行い、受傷した部位と骨折の程度を判断します。
 骨の折れ方によって治療法が異なる為、骨折線の入り方や骨片の有無、関節内骨折かどうかなどの判断が必要になります。

<保存的治療法>
 通常は、徒手整復してからギプスやギプスシーネで固定して、状態が良ければ約5週でギプスを取ります。
 *幼小児の場合は、骨が柔らかい為にポキンと完全に折れる事は少なく、折れずに曲がったような若木骨折、潰れたような竹節状骨折、いわゆる骨と言われる部分と今後成長して行く軟骨部分との間で骨折する骨端線離解がありますが、骨癒合も早く、元に戻そうとする自家矯正力が旺盛なので、多くの場合は手術は適応となりません。
<手術的治療法>
 手術では、X線透視下でキルシュナー鋼線と言われる針金で固定する方法や、最近ではロッキングプレートと言われるプレートで固定する方法が主流となりつつあります。
 手術が適応となるのは、活動性の高い人の(スポーツ選手や認知症となった人など)や骨片が多数あったり、骨欠損があったりして整復が出来ない場合、また整復した状態を保てないような不安定型の骨折の場合などとなります。

<予後>
 予後は比較的に良好ですが、骨折して早期に外科的な整復・固定されたとしても、痛みや関節可動域(ROM)の減少などの機能障害、手根管症候群と言った神経障害、長母指伸筋腱長母指屈筋腱などの断裂を生じる事があります。

<この骨折をした有名人>
 元メジャーリーガーでヤンキース時代の松井秀樹選手、ももいろクローバーZの高城れにさん、AKB48の木崎ゆりあさんなど。

高齢者の方は、特に転倒には注意しましょう!
<コーレス骨折の様子 兵庫医科大学のHPより>

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